最近のニュースで再びよくその名前を聞くこととなった、北朝鮮船籍である万景峰号「マンギョンボンごう」。
「国連安保理の制裁違反の貨物運搬でロシアのウラジオストク港へ入港を拒否された。」や、
2月9日から始まる、平昌オリンピックに合わせて、
「北朝鮮の芸術団(三池淵(サムジヨン)管弦楽団)が万景峰号92で韓国入りした」などと話題です。
ニュースなどではあまり説明されることがありませんが、
そもそも貨客船とは何なのでしょうか。
ここではそんな身近な疑問について解説し、
万景峰号の使用用途や日本との関係、船内の様子などをできるだけ分かりやすく紹介してみたいと思います。
「万景峰号」と「万景峰号92」〜貨客船ってなに〜
まず同じ「万景峰号」という名前が使われ、どちらとも貨客船とされていますが、「万景峰号」と「万景峰号92」は別の船。
それぞれの用途で現在問題になっている点などを整理してみることにしましょう。
貨客船の定義
貨客船万景峰号と言うとかなり舌を巻きそうになりますが、
まず貨客船とはなんなのか簡単に確認しておきましょう。
貨客船とは、簡単に言うと「旅客と貨物を同時に運ぶ船。」のことです。
貨物である「モノ」を専門に運ぶのが「貨物船」で船員以外の旅客定員は12名。
それ以上の13名からは旅客であるある「人」を専門に運ぶ「旅客船」と言われますので、
貨客船はこの中間の立ち位置になりますね。
( 貨客船は法律上は、船および人命の安全に関する設備・構造を持った「客船」としての規定を受けているそうです)
万景峰号とは?〜日本や海外との関わりについて〜
それでは、「万景峰号」と「万景峰号92」についての詳細を比較していきます。
「万景峰号」
まず、「国連安保理の制裁違反の貨物運搬でロシアのウラジオストク港へ入港を拒否された。」、
というニュースがあった初代の「万景峰号」から船の情報を確認してみましょう。
万景峰号
- 全長: 102 m
- 全幅: 14 m
- 総トン数: 3,317 t
- 定員: 約200名
- 載貨量: 約1500トン
初代である「万景峰号」は1971年5月に就航となった北朝鮮船籍の貨客船であり、
何度かの改修を経て現在の姿となっています。
1984年までの数十年間にわたって、在日朝鮮人の帰還事業に使われていたとされていますが、
それ以降の用途は、主にロシアのウラジオストク港と北朝鮮の羅先(※ラソン)を結ぶ定期航路に配置されていたようです。
ところが、2017年の5月、船の港停泊に掛かる費用である港湾使用料の未払いなどが問題となり、
同じ年の8月下旬にこの定期航路便は休止となっていました。
現在は、10月ごろから不定期の運航が再開が確認されています。
– メモ –
※北朝鮮の羅先という地域には羅先(ラソン)経済特区という、自由経済貿易地帯があり、
外国からの資本(投資金や外国の企業など)を呼び込むための開発区域となっている。
今回ロシアの港で入港拒否をされたとニュースになったこちらの「万景峰号」は、
北朝鮮が再三にわたるミサイル開発や発射などを受けて、国連絡みで制裁を課していたにもかかわらず、
その制裁に違反した貨物を運んでいたことが疑われたため、ロシア側が入港させなかったというものでした。
これを受けて、万景峰号は燃料などがなくなり、救難信号を発信。
タンカー船を使っての給油が行われたとされており、
今後の動向が気になるところです。
引き続き注目しておきましょう。
「万景峰号92」と日本のつながり
万景峰号92
全長: 126 m
全幅: 20.5 m
総トン数: 9,672 t
定員: 350名
「万景峰92」は「万景峰号」に比べてスペックも少し大きい船ですね。
こちらの船は、金日成氏の80歳の誕生日を記念して北朝鮮に寄贈された船になります。
在日韓国及び朝鮮人のうち、支持者たちの寄付で集めた資金で建造されたようです。
1992年に進水式を迎えたことから、万景峰号”92″と名付けられました。
当初は主に新潟と北朝鮮の区間の就航に使われていることもありましたが、
度重なる北朝鮮のミサイル開発や核実験を受けて、
2006年の10月14日より、北朝鮮の全ての船舶は入港禁止となったため、
この「万景峰号92」もその入港禁止の対象となっています。
出典: https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20180206-00000072-ann-int
その日本とも繋がりがあった「万景峰号92」が今韓国の港で問題視されています。
2月9日から始まる、平昌オリンピックに合わせて、
「北朝鮮の芸術団(三池淵(サムジヨン)管弦楽団)が万景峰号92で韓国入りした」というニュースが流れましたが、
これには大きく2つの問題点があるとされています。
「万景峰号92」の入港を許すことの問題の一つ目に、過去の事件を受けた韓国の北朝鮮に対する措置、「5・24措置」というものがあります。
基本的には、「北の船舶による韓国海域の航行と入港を禁じる」ものですが、韓国はオリンピックの成功を優先するために例外とするとしています。
そして、もう一つが「国連の北朝鮮制裁決議に違反する」というものです。
北朝鮮に対して、世界の国々が制裁の足並みを揃える中、韓国の対応に疑問を投げかける声はどんどん強くなっています。
こちらも引き続き注目ですね。
万景峰号の船内構造はどうなっているの?
ほとんどの方ですと、万景峰号に乗る機会はほぼ無いと思いますが、
船内の構造が紹介されている画像がありましたので紹介します。
こちらは少し大きほうで、現在韓国への入港が話題となっている「万景峰号92」の船体の詳細ですね。
出典: https://i.ytimg.com/vi/B_14_qHPUMM/maxresdefault.jpg
また、元祖「万景峰号」である方の船には、以前取材に入ったという記事も見つかりしたので、
そちらの画像もいくつか紹介します。
5階建の船内に客室は49室だそうです。
一等客室
出典: https://www.houdoukyoku.jp/posts/13418
ミーティングルーム
出典: https://www.houdoukyoku.jp/posts/13418
女性スタッフ
出典: https://www.houdoukyoku.jp/posts/13418
終わりに
およそ、十年ほど前だったでしょうか。
貨客船「万景峰号」はその発音しにくいという船名で、
アナウンサーなどが苦労する言葉として話題となったことがありました。
その後はあまり聞く機会もなかったのですが、
この平昌冬季オリンピックの時期になって再びニュースで耳にすることが多くなってきましたね。
今回のニュースでは、平和の象徴であるべきオリンピックが何か政治色を帯びてしまって少し悲しい気持ちにもなります。
どうか選手たちには影響を及ぼさないよう願います。
“万景峰号とは 〜現在の用途や貨客船内部の様子を分かりやすく解説〜” への1件のフィードバック